■個人認証から見た耳介の特徴
個人識別、認証では、識別者に対し積極的識別行動を要求しないですむ生体情報で、心理的な不快感や嫌悪感を与えず、 成長などによる容貌の変化が少なく、かつ個人差が著
しい人体の部位を新たに検討する必要があると考え、本稿では、人 の耳介を用いた個人識別方式について検討した結果について述べます。
人間の耳介は、(結果として)集音と増幅機能を持つように複雑に入り組んだ鞍骨の凹凸によって形づくられていて、こ の凹凸形状はきわめて著しい個人差があります。耳介の長さ、軟骨の長さ、耳介の幅などの成長は、耳長は16〜17才、耳幅
は10歳前後で男女とも成長が止まり安定期に入り、40歳前後で少しずつ成長することが報告されています。この点で、最近 の身長の変化、および加齢に対して、容貌の変化が少ない特徴があります。耳介の外形は楕円に似た形で、頭部と顔部、首
部に囲まれた領域にあり、色彩的にどの領域とも異なった特徴があります。
耳介は、第1図に示したように珠骨の形状およびそれらが作る窪みから18の構成要素が考えられます、挟骨が作る稜線には、第2図に示したように耳輪外線、耳輪内縁、耳甲介外緑などがあり著しい個人性があります。
また、耳介を楕円に似せた場合、長径心頭日当する耳長(62〜65mm程度)、短径に相当する耳幅(29〜33mm程度)なども大きな特徴があり、ほかの部分は第1表に示したような大きさがあります。家族間では、耳長、耳甲介腔に個人性が認められ、10mm程度の差があり、親兄弟の識別に有効になります。
■耳介の何が認証に利用できるか
第1図の18の耳介要素は、隆起部、陥没部、平坦部の大きく三つに分けられます。 これらが作る閉領域、例えば耳垂、 対耳梅郷領域などを大まかに面積で測った特徴は、モルフオロジーパターンスペタトラム(p43)に見るように簡単な方法でも抽出ができます。
構造要素に対するモルフオロジー演算は、相似形(ズーム)に対し弱い特徴がありますが、上位数名の候補者の絞り込みに効果があり、 入力時にズーム、コントラストの変化回転を少なくするなど限定すると(適切な方法ではありませんが、具体的には正規化を行うと)
90%程度の候補者を同定できる能力があります。 耳介の隆起部が作る稜線にも著しい特徴があり、第2図に示した耳拾外線、耳輪内縁、耳甲介外線備造線(仮称)の形状を連結画像間
の曲率、稜線の周波数スペクトラム、稜線の長さなどで比較すると、稜線の自動抽出綻果が完全とはいえませんが、試行実験では他人同士 では明らかに異なります。耳介内部の形状の差異は明らかです。具体的比較法はそれぞれ考えられます。
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